要件定義や仕様検討作業では、お客様にご要望をヒアリングすることになると思いますが、ここぞとばかりお客様がご要望をどんどん挙げてこられるケースがよくあります。(言うだけはタダですものね!)
通常は工数の関係から全てのご要望を実装することはできませんし、工数を度外視しても全ご要望の実現することは良い対応とはいえません。
でも、せっかくご提示いただいた要件を無下に却下することもなかなか難しいですし、要件に仕分けが上手く行かずお客様の不満感や不信感に繋がってしまうことも避けたいですよねぇ?
この記事では膨大なお客様のご要望を的確に仕分けしていく時のポイントについて記載したいと思います。
要件の仕分け方
〇 ステップ1:対応要否の検討
まずは挙げられたご要望を対応すべきか否かの検討を行います。
・ポイント1:プロジェクトの目的に沿っているか?
=>まずはプロジェクトの目的に沿ってるかを確認します。沿っていない場合は少なくともこのプロジェクトで対応すべきではないですよね。このためにもプロジェクトの目的は明確に共有しておく必要があります。
例)発注処理の機能改善プロジェクトなのに、受注処理の改善についてのご要件をいただいた。
=>これは完全にプロジェクトの目的(発注処理の機能改善)に沿っていないですよね?
・ポイント2:実現可能なのか?
=>プロジェクトでカバーすべき範囲にも依存しますが、そもそも実現可能でないご要望については対応することはできません。
例)発注実行をクリックした後のレスポンスは1秒以内にしてほしい。
=>システムのレスポンスは、ネットワークや利用端末(PC)のスペックにも大きく依存するので、システムの開発のみをプロジェクトの範囲とした場合、このようなレスポンスに関する要件は対応できません。
・ポイント3:他の要望との整合性は?
=>対応することが決まっている他のご要件と整合性が合わない場合は、整合性の合わない要件と比較して対応可否を検討する必要があります。
例)セキュリティを考慮し社外からはアクセス不可とする<->利便性を考慮しスマートフォンを利用した社外向けサービスを追加する
=>これはダメですよね? 特に「利便性」と「セキュリティ」に関する要件は整合性が取れない傾向にあります。
・ポイント4:運用上の問題は無いのか?
=>利用ユーザーにとっては有益な要件だったとしてもそれを実現するためにはユーザーのメリットと比べて何倍もの運用負荷が発生するとすれば、事実上対応不可能な要件という分類になります。
例)発注システムにおいて、取引先の商品を商品コードを入力することで表示してほしい
=>取引先の全商品を発注システム内のマスターに全品登録する必要がある、しかも商品の発注停止などが発生すれば適宜対応(マスタの変更や削除)しなければならない
〇 ステップ2:工数の見積もりと優先順位の検討
ステップ1で「対応の可能性有り」となった各ご要望に対し、作業工数と作業期間をザックリ見積もります。またご要望については対応した場合の効果を目安に優先順位を明らかにします。
〇 ステップ3:対応要件の整理
これらの検討事項をまとめた上で、お客様と交渉を行います。この交渉において自社の理由(工数の関係など)によりお客様のご要件をお断りする場合は、システム屋が全面に出ることは得策ではありません。なぜならこの交渉においてお客様ご担当者との対決姿勢が構築されてしまうと、その後のプロジェクト運営に支障をきたすからです。その為、この場には会社の上司や営業担当などに出席してもらい「ヨゴレ役」を担当してもらいましょう。(私はやりたいのですが、会社的にはNGなので・・・というスタンスで!)
仕分け時の注意1:ご要件をいただくのは良いこと
せっかくプロジェクトが順調に進んでいるのに、その状況を無視して追加要件をどんどん挙げてこられると、正直言って「ムっ」とするものですし、「そんな要件は対応できません」と冷たくあしらいたい気持ちも「よーーーーく」わかります。
但し、追加要件をいただくということは「導入/構築するシステムへの期待の表れ」でもあります。お客様から追加要件の話が出たら、まずは「おっ、このシステム期待されてるんだなぁ」と(無理やりにでも)思って、感情的にならないようにしましょう。(大変だけど・・・)
仕分け時の注意2:ヒアリング中に仕分けは行わない
もちろん事前に「全てが実装できる訳ではない」ということはお伝えしておく必要はありますが、ご要望をヒアリングしている時は実装可否について極力コメントしないようにしましょう。
気持ちよく要望について話している時に「いや、ちょっとそれは・・」とか「工数的に無理です」等ネガティブな反応があると、お客様はいきなり不満を持つことにもなりかねません。まずは聞き役に徹し、実装可否にかかわらずご要望の全てを出しきっていただくことが大切です。ただし、ご要望について不明な部分が有る場合に確認することはもちろんOKです。
お客様のご要望をお客様も納得できる形で上手く仕分けることは、システム屋として必須のスキルであり、かつ個々が上手くいけばお客様の信頼を損なうことなく(むしろ信頼関係が強固になる)プロジェクトを成功に導くことができます。
是非、恐れずにトライしてください。
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